上方落語界の重鎮、桂ざこば師匠が亡くなって、1年あまり。
その門下の中堅3人がこのほど、めでたい襲名の場を迎えた。
桂ひろば改め二代目桂力造
桂ちょうば改め四代目桂米之助
桂そうば改め二代目桂惣兵衛
三人同時襲名の披露公演が、天満天神繁昌亭の昼席にて行われた(6/9ー6/15)。
楽屋にお邪魔した6月13日の楽屋、舞台の様子をお伝えする。
文・写真 林家竹丸
2024年4月、桂ざこば師匠は愛弟子3人の襲名を発表する記者会見に元気な姿で出席した。
だが、同年6月12日に76歳で他界。3人の晴れ姿を見届けることはできなかった。
三人同時襲名の皮切りは2025年3月19日、20日。サンケイホールブリーゼ(大阪市北区)での公演だった。(上方落語の歴史において、3人の落語家が同時同一の舞台で襲名披露を行うのは52年ぶり)
続いて、神戸新開地・喜楽館昼席で7日間。
繁昌亭でのお披露目は、師匠の命日を含む7日間、開催された。
すでにお披露目の場数を重ねてきたうえ、繁昌亭でも5日目とあって3人とも気負う様子はない。談笑を交わすほどにリラックスしている。
開演から約1時間後の主役3人。楽屋にて。
この3人、実は全員1978年生まれの同学年。入門順により先輩、後輩の序列はあっても、はた目には上下関係より仲の良さが目立つのは、そんな事情もあるのだろう。
中入り直後の口上の舞台に並ぶ先輩たちが黒紋付、袴に着替え始めると、徐々に楽屋の緊張感が高まっていく。
舞台では中トリの笑福亭鶴笑がパペット落語(※1)「立体西遊記」を演じて爆笑をとり、人形を使って主役3人にお祝いメッセージを送った。客席が最高に盛り上がったところで中入りとなった。
口上の直前、緞帳の内側にて。左から力造、米之助、惣兵衛
落語の襲名の口上は、型をおさえつつ、しっかり笑いをとるのが特徴だ。この点、文楽、歌舞伎の襲名口上と大きく異なる。この日の司会は笑福亭呂好。
桂二乗「実は僕も3人と同学年なんです。1978年生まれは最強です!」
林家菊丸は、11年前の自身の襲名の経験を踏まえてあいさつ。
「ご祝儀をぎょうさんいただく襲名から2年後に、税務署から調査が入ります。祝儀袋はすべて燃やしておくように」(※2)
鶴笑は同門のことをネタに。
「3人同時に襲名披露て、仲がええからできますねん。(仲が悪い)笑福亭一門ではでけません」
この間、主役3人は舞台中央で平伏したまま。あいさつはなし。これが口上の型であり、しきたりだ。最後は「打ちま~しょ、チョンチョン・・・」のにぎやかな大阪締め。
主役3人の出番は7日間、口上のあと。出演順は日替わりで、この日は力造、惣兵衛、トリが米之助の順だ。
力造は長めのマクラでお客さんをつかんだあと、珍品の噺「法華坊主」。惣兵衛は独創性あふれる自作の「難読学園」。米之助は講談をもとにした「竹の水仙」できっちり締めた。
3人の演目のバランスとチームワークが光った高座だった。
襲名口上の舞台に並ぶことがかなわなかったざこば師匠だが、愛弟子たちの活躍を何よりも喜んでおられることだろう。
三人同時襲名披露公演は7月8日(火)~10日(木)、ざこば師匠がオーナーだった演芸場「動楽亭」の昼席でも行われる。
(※1)自作のぬいぐるみや人形を駆使した、鶴笑が編み出した爆笑落語。
(※2)もちろん冗談である。