お楽しみ

サークルをさーぐる(探る)  上方落語写真部「芸写倶楽部」編

11月中旬の平日。神戸の須磨離宮公園に集まったのは上方落語協会写真部「芸写倶楽部」の面々。

目的はそろそろピークを迎える紅葉の撮影である。前年の年末にイルミネーションを撮りに出掛けたのを最後、コロナの影響で動けずほぼ1年ぶりの活動となった。
現在部員は18名、撮影会などの連絡はLINEグループでやり取りしている。この日集まったのは部長の桂小梅、副部長の小池奈緒子(桂三ノ助夫人)、三味線の勝正子、講談の旭堂小南陵、桂咲之輔、そして私笑福亭恭瓶の6名、忙しい人が多いようで参加は1/3の人数だった…。数日前に入部した咲之輔君の新入部員歓迎撮影会と銘打ち、須磨離宮公園に足を踏み入れた。まず皆が興味を持ったのは咲之輔君のカメラ、最新のミラーレス一眼レフである。元々カメラが趣味であったところ、この新しいカメラの購入が入部のきっかけとなったらしい。カメラだけではなく、三脚やバッグ、アクセサリーに至るまで新しい装備に目を見張った。実は写真部とは言いながら自分のカメラを使いこなせていない我々にとって詳しい人が増えるのはとても心強いことである。この日、勝さんが手にしている一眼レフカメラはお父様の愛用品を借りてきたそうで、小梅部長から使い方の指南を受けて撮影が始まった。


【撮影:小池奈緒子】

公園内の植物園エリアをおよそ2時間かけて一周。至る所にある紅葉スポットをそれぞれの感性でカメラに収める。時々、他の人の写真を見せてもらい参考にしながらゆっくり進んで行った。


【撮影:笑福亭恭瓶】


【撮影:桂小梅】


【撮影:桂咲之輔】


【撮影:桂小梅】


【撮影:小池奈緒子】

写真部の始まりは、2016年の彦八まつりで奈緒子副部長が小梅部長を撮影に誘ったのがきっかけ。「2人だけでは何やし…」という事で三味線の佐々木千華さんにも加わってもらい、豊能のコスモスの里へ出かけたのが記念すべき第1回目の撮影会だったそう。そこから月一回でのペースで撮影会を続けるうち徐々に参加者が増えていった。落語家や三味線だけではなく上方落語協会の職員さんも加わり今では総勢18名の大所帯。LINEグループを使うことで、連絡事項だけではなく撮った写真をそこで披露することも出来、撮影会後のLINEは大いに盛り上がる。
小梅部長に今まで行った撮影場所で印象に残っているところを聞くと、奈良の曽爾高原という答えが返ってきた。この時は部長の師匠であり写真部特別顧問の桂梅團治師匠に同行していただいた。梅團治師匠は小梅部長にとって落語と写真の師匠なのである。梅團治師匠は鉄道写真しか撮らない方とお聞きしており、この時参加されたのが最初で最後、おそらく余程暇だったと考えられる。私は残念ながらご一緒できなかったが、撮影後LINEのアルバムにあげられた写真に心奪われてしまった。そこには黄金色に輝くススキの写真が何枚も紹介され、全て表現が違うことに驚いた。


【撮影:小池奈緒子】


【撮影:桂小梅】

同じ落語が演者によって変わるように、写真も被写体が同じでも撮る人によって違いが出ることに気付いた瞬間だった。思わずカメラの設定や撮影のコツなど尋ねたことを今でも覚えている。

須磨離宮公園での撮影会にも疲れが見え始めた頃、ちょうど鑑賞温室2階のカフェに辿り着いた。誰言うとはなく一息つきながらお互いの写真を見せ合う品評会の始まりかと思いきや、カフェのメニューにあった「薔薇とラズベリーのジェラート」の文字に全員が飛びついた。紅葉そっちのけで手にしたジェラートをそれぞれが撮影し口にする。ジェラートには紅葉の葉をかたどったクッキーが刺さっていて正にインスタ映えである。あっさりした甘味が爽やかに溶けてゆき、オッサンでも楽しめる口当たりに思わず唸ってしまう。


【撮影:小池奈緒子】


【撮影:勝正子】

最後は咲之輔君の提案で全員の集合写真撮影。自慢のカメラで撮ってくれるのはよいが、まだ使い慣れない三脚をセッティング中に指を挟んだようで出血しながらの撮影。そこまでして周りを笑かそうとするサービス精神に頭が下がる。


【撮影:小池奈緒子】

上下関係の厳しい演芸の世界でありながら写真部にはそれが感じられない、写真好きが集まり撮影を楽しんでいる。ファインダーから見える世界は目まぐるしく変化しているが、切り取られた一瞬で伝えたいことは昔と変わらないものばかり。それは我々が古典芸能に関わっているからなのかな…。とは言え新しいカメラは欲しくなる、咲之輔君に「そのカメラなんぼ?」と尋ねたら「引きますよー」と返ってきた。次に会った時はそのカメラ片手にニンマリ笑う咲之輔君を撮らせてもらおう。

文 笑福亭恭瓶

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