5月31日、上方落語協会第七代会長に、笑福亭仁智師が就任しました。
15年間会長を勤めた桂文枝師のあとを受けての就任。お話しを伺いました。
「まずはおめでとうございます。会長としての抱負を聞かせてください」
師匠の仁鶴に報告したら「まぁボチボチやっていき」と言われました。
文枝前会長は「天満天神繁昌亭」という物凄い物を作りました。
本当に凄いことで、現在の上方落語の基盤作りをなさったわけです。とくにハード面で。
これからはソフトの部分でもっと充実させていきたい。
とくに昼席の出番をもっと色合い重視にしていきたいと思ってます。
「色合い重視というと?」
昼席の出番は一週間出てもらうわけなんで、色合いを考えてもなかなか思うようにいかない。
いきおいスケジュール重視というか妥協してしまうところがあるんです。
なので今までより早めに出番組みを始めて、楽しい番組作りをやっていきたいと思っています。
リピーターのお客様は出番を見て、行くか行かないかを決められますから。
それにもっと営業もかけていきたいと思ってます。
「営業?集客営業ですね。今まではあまりしていなかったんですか?」
ほとんどしてません。人員も足りないし。でもやっぱり営業もかけて、
沢山のお客様に来ていただければ落語家もテンションが上がり良い芸ができるし、
そうなればお客様の満足度も上ってまた来ていただける。そうなるとええ方へ回る。
入りが悪いときによく「空席以外はみんな満席で」とかマクラで言うでしょ。
そういう自虐ネタのようなことを言わなくてすむようにする。そうするとマクラももっと前向きなものになるし。
相乗効果というやつで、そうなると有難いですね。目標はずばり一割増。たった一割がなかなか難しいけど。
考えられることはすべてやっていきます。
商店街とのもっと緊密な連携、旅行社とのタイアップ、グッズの充実やグルメマップの作成なんかも考えています。
落語で笑ったあとに美味しいものを安い値段で食べて帰る。これ、安上がりの贅沢やで。
「もうすぐ神戸の喜楽館もオープンしますよね。噺家の出番も増えます」
繁昌亭は上方落語支援の会の応援を受けながらも、運営は我々噺家が全部やってますが、喜楽館はそうやない。
地元のNPOの管理のもとで落語家が出演するというかたちをとってますが、もっともっと話し合って両者で作っていく。
アイデアも出す。そうすれば繁昌亭、喜楽館ともに盛り上がっていくことができると思ってます。
それに繁昌亭と喜楽館の色分けもあるかな。繁昌亭はそれこそたっぷりと観ていただく。
喜楽館の方は出演者数も多少コンパクトになるんで、中身の濃いものにしていきたい。
今考えてるのは二つ目重視。大事やで二つ目。繁昌亭は全部で10組出るから三つ目で盛り返すことができるけど、
喜楽館は8組やからね、二つ目がこけたらあと辛いで。だから二つ目重視。
そして若手の噺家がトリを勤めるっていうこともありかな。若手言うても30年から40年クラスのベテランやでもちろん。
そうすることで中身の濃いものができると思う。
「落語家の数も増え寄席も増えて、これもやはり繁昌亭ができたからこそと」
当たり前やがな。繁昌亭は上方落語協会のというより上方落語の柱ですわ。
まず繁昌亭に来てもらう。それが初めての生落語っていうひとも多いと思うねん。
そこで落語って面白いと思ってもらう。で、リピーターになってもらう。
そのうち繁昌亭以外の落語会にも行っていただく。
そうすれば落語家個人の仕事も増えるやろうし、その仕事先で落語に出会った人がまた繁昌亭へ来ていただく。
でもそれにはやっぱりしっかり仕事せなあかん。
初めてのひとに、こんなもんかと思われたらそれでしまい。中途退学者を出したらあかんねん。
さっき番組は色合い重視というたけど、チャンスは平等にあります。
ハード面の充実も営業面の頑張りも、そして一番大事な舞台での落語も、細かいことの積み重ね。
寄席は道場でもあるわけで、お客さんと噺家の真剣勝負、また噺家同士も真剣勝負。
「真剣勝負、心得ました。今日はありがとうございました」
インタビューを終えて
繁昌亭の3階にある会議室でのインタビュー。
1時間ぐらいのつもりが2時間半近く喋ってました。
最後はインタビューというより、これからこんなこともしたい、
あんなこともやらなあかんと、熱い議論になっていました。
新会長の色が出るのはもう少し時間がたってからということになるんでしょう。
仁智会長のもと、新しい上方落語協会にぜひご期待ください。
インタビュー・文 桂枝女太