新しくなりました!
今年11回目を迎える「上方落語若手噺家グランプリ」
2025年6月18日の水曜日、午後6時30分。
天満天神繁昌亭の緞帳が上がるなり、ものすごい盛り上がり。
司会の笑福亭生寿が出演者や審査員の紹介をするたびにまたまたものすごい拍手と声援。
予選を勝ち抜いたファイナリストたちが火花を散らす決勝は、甲子園球場に負けない熱気の中で始まりました。
「上方落語若手噺家グランプリ」=主催:上方落語協会、協力:関西・大阪21世紀協会=は入門4年から18年までの落語家たちが制限時間内で芸を競うコンクール。
今年は42人がエントリー。4月以降、繁昌亭夜席で4回にわたって予選が行われました。各回、2人ずつが予選を突破し、精鋭の8人が決勝で相まみえました。
全員が持ち味を発揮し、大熱演の結果、優勝は「高台寺」を演じた林家染吉、準優勝は自作の「保険の保険の保険」を演じた桂三実でした。
2007年入門の染吉はキャリア制限ギリギリ、最後の挑戦でのテッペンでした。
「笑福亭仁智会長より表彰」
林家染吉(写真右)
「思わず涙してしまいました。ラストイヤーでしたから。
家内が来てくれているのですが、三実君の応援なんです。僕も三実君のファンで。
くじ運がよかったと思います。順番が違ったら結果も変わっていたかも。
司会の生寿君も同期入門なんです。
生寿君が優勝した年の受賞ウィークの口上(※)の司会を僕やったんですけど・・・悔しかった」
笑福亭生寿
「染吉君の受賞ウィークの口上、僕に司会させて」
林家染吉
「同期のうち3人がグランプリ獲りました(桂小鯛、生寿、染吉)。僕らの同期すごいでしょ」
桂三実(写真左)
「悔しかったです。悔しくて泣きたかったんですけど、見たら染吉さんが先に泣いていたんで泣けませんでした。
準優勝2回目なんですが、とにかく悔しい。また頑張ります」
そして今年からはルールも審査体制も変わりました!
アート引越センターの創業者で、現在はアートコーポレーション株式会社名誉会長の寺田千代乃氏のご寄付で始まったこのグランプリも、昨年の第10回をもって一応の締めくくりとなりました。
「10年間、若手の皆さんの頑張りをを見てきました。今後も続けましょう」と寺田氏からありがたいお言葉をいただき、続くことになりました。
「開演前の緊張感溢れる楽屋」
「抽選の準備に真剣な司会の笑福亭生寿」
「緊張どこ吹く風のお囃子担当。左から桂りょうば、笑福亭呂翔、そして三味線の内海英華のおっ師匠はん」
「いよいよ開演」
グランプリもこれを機会に少しリニューアル。
まず決勝戦の審査員が大幅に変わり、劇場支配人や落語番組担当アナウンサーなど、落語に精通した次の方々にお願いしました。
熊谷岳志(NHK大阪放送局プロデューサー)
日高美恵(寄席情報誌「よせぴっ」編集部)
福島暢啓(毎日放送アナウンサー)
伊藤史隆(朝日放送アナウンサーで神戸新開地喜楽館支配人)
恩田雅和(天満天神繁昌亭元支配人で現在はアドバイザー)
審査委員長として落語家からひとり、上方落語界の重鎮、桂文珍(若手育成特別顧問)を加えての6人の皆さん方にお願いしました。
開演前の舞台あいさつで桂文珍審査委員長からひとこと
「今回から得点が公表されます。これは審査員も審査されるということで」
そしてルールも多少・・・いや大幅に変わりました。
今までは事前にネタを出し、順番も事前に抽選で決めていたのですが、
ネタ出しはせず、順番も当日の舞台上で抽選で決めることになりました。
たいした違いではなさそうにも見えますがところがどっこい、これが大変な違いで。
まずネタを出していないので誰がどんな落語をするかわからない。
出番順も当日までわからない。
自分がやろうとしていた噺を先の人にされたらできない、
出番順によってはそれに相応しいネタをしなければならない。
その場での臨機応変さが求められるようになったのです。
決勝に向けてひとつのネタをじっくりと熟成をということができない。
いや、複数のネタを熟成させなければならないことになりました。
その中で優勝した染吉はトリで「高台寺」という笑いのほとんどない怪談噺を演じました。
皆が爆笑を取っている中で、トリというポジションであえて笑いの少ないネタ、それでもいくつかはある笑いの場面もわざとはずして臨んだ舞台で、
見事に満員の観客を世にも不思議な物語の世界に引き込んだ。
技術的に熟成されていたことはもちろん、その臨機応変かつ冷静な判断で栄冠をつかみました。
おめでとう!(^^)!
「戦い終わって・・・ふたりともええ顔や(*^。^*)」
文・写真 桂枝女太 (文中敬称略)
(※)グランプリ優勝者は後日、繁昌亭昼席にて7日間連続でトリを務め、口上の舞台の中央で主役となる晴れ舞台に抜擢される。
ほっこりするひとコマ ~上方落語協会事務局より
月亭遊方。顔を隠し(?)、弟子二人の活躍をこっそり見届けに。いつの間にか消えていた。
繁昌亭事務室で点数の集計中、染吉の優勝が確定すると、盟友・生寿が感極まって涙。「まだ早い!」と周りからツッコミが。
点数発表の瞬間。染吉(右端)は自分の優勝に気づいていない。
共演者も祝福「染吉兄さん、おめでとーございます!」