翔ぶトリウィーク 記者会見
芸歴15周年を迎える噺家の「翔ぶトリウィーク」。
昨年から始まったこの企画は、東京の落語界でいえば「真打ち」にあたる入門15年の上方の若手らが、繁昌亭昼席のトリを7日間連続、交代で勤めるというもの。
ふだんの昼席のトリは大御所、重鎮が勤める場合がほとんど。
抜擢されて大役に挑む若き主役たちが、記者会見で意気込みを語った。(文中敬称略)
今年の主役は、2010年入門の月亭天使(師匠:月亭文都)、桂鞠輔(同:桂米輔)、桂紋四郎(同:桂春蝶)、桂あおば(同:桂ざこば)の4人。
(左から)月亭天使、桂あおば、桂鞠輔、桂紋四郎
9月1日、天満天神繁昌亭で行われた記者会見に、4人は黒紋付袴のキリッとした姿で臨んだ。同席した上方落語協会会長、笑福亭仁智は、トリを1週間とることで「今後の発展につなげ、自覚を持って、翔ぶ鳥を落とす勢いを付けていただきたい」と語った。
最初にウィークを勤める天使(9/22〜28出演)は、天満天神繁昌亭の元スタッフで、落語台本の作家志望だった。
ところが、本人いわく、魔が差して(?)噺家の道へ。
「ウィークを前に緊張しています。でも、どんなふうにトリを迎えることができるのか、自分自身も楽しみ」と余裕も垣間見えた。
稽古した古典落語を初演する「ネタおろし」にこの場で挑むかもしれず、新作落語も1日は演じるそうだ。
あおば(9/29〜10/5出演)は、「(昨年亡くなった)師匠に、1週間終わった後、良い報告ができるように頑張ります」と決意を語った。
「師匠みたいな落語がしたい」「師匠の十八番『子は鎹(かすがい)』をどこかの日でやりたいなと思っています」と、亡きざこばへの愛があふれる。
鞠輔(10/6〜12出演)は、「翔ぶトリウィークですので、格好(カッコウ)良く、ハッと(ハト)するような舞台になるように、キジっと(キジ)頑張ります!」とダジャレを交えた決意表明。
土器を発掘するパートの経験を活かして、1週間のどこかで「土器発掘落語をさせていただけたら…ドキドキ(土器土器)しております!」。
ダジャレを連発する鞠輔に、司会の生喬が思わず「陰の桂文福一門やな!」と、強烈なツッコミ! 一同、大笑いとなった。
紋四郎(10/13〜19出演)は、「(神戸・新開地)喜楽館でのウィークも合わせて14回トリをとることになるので、14本、ネタを用意しています! このウィークのために稽古をしておりますので、ご期待いただければ」とやる気をたぎらせた。
「20周年、30周年の時、ほんまにトリをとれるような噺家になりたい」という紋四郎の目は、翔ぶトリウィークのその先の未来をしっかり見据えていた。
仁智が会見で述べた「何事にもプロは心の準備、ネタの準備が一番大事」。
この言葉を胸に、ウィークに向けてますます自身の落語に磨きをかけていく4人から目が離せない。
これからが楽しみな天使、鞠輔、紋四郎、あおばの「翔ぶトリウィーク」。
お客様には取り(トリ)あえず何日かだけとは言わず、可能な限り足を運んでいただきたい。
虜(トリこ)になって、数十年後に、「おおむかし(オウム)から応援してるんや!」と自慢できること間違いなし!
左は司会の笑福亭生喬、右は上方落語協会会長の笑福亭仁智
文・写真 露の瑞