落語家が公演、稽古など多目的に使える貸しスペース「笑仁亭」が大阪・日本橋にオープンする。若手が研鑽を積む小規模公演にふさわしい場がミナミに復活。新たな拠点の誕生に期待がかかる。
ミナミより愛をこめて
「笑仁亭」は大阪の台所、黒門市場の西端から南へ徒歩約8分。ビルの3階にある(大阪市浪速区3-3-17)。
オーナーは山口仁史さん。このビルで製本業を営む。落語をはじめ芸能に親しみ、理解が深い山口さんは「若い芸人さんが芸を磨く場を作り、その成長を見たい」とかねてから考えていた。知人を通じて桂福枝、笑福亭智丸と知り合い、協力的な2人と意見交換を重ねて構想を具体化していった。
「笑仁亭」=しょうじんてい=のネーミングは、山口さんの名前から「仁」の字をとり、「精進」とかけたもの。若手落語家への愛情が込められている。
亡き先輩の思いを受け継ぐ
客席数はパイプ椅子で50ほど。若手の研鑽会にはうってつけの広さだ。
見台、座布団、もうせんといった舞台道具は、2024年5月29日、45歳で亡くなった笑福亭智六の遺品が使われる。同門の弟分である智丸、他門の後輩たちが、早逝した先輩の思いを受け継ぐ。
また、もともと山口さんの会社の社員寮だった居室が楽屋に転用され、「使い勝手はとてもいい」(福枝)。
空白区解消に期待
9月28日(土)13時開演のこけら落とし公演をつとめる桂福枝、笑福亭智丸、月亭秀都が記者会見を開いた(8月20日@上方落語協会会館)。
入門時期がほぼ同じの3人は次のように抱負、意気込みなどを語った。
「ミナミにはこうしたスペースがなかったので、ありがたい」
「梅田界隈のキタ、繁昌亭周辺と違う雰囲気の地で、この会場が活気あふれる場であることを印象づけたい」
「オープニングにふさわしく、景気よく勢いのある噺を演じたい」
天満天神繁昌亭の開業(2006年)以前、大阪・ミナミは、本拠地を持たなかった上方落語家の一大拠点だった。若手の会は「ワッハ上方・レッスンルーム」「芸能楽しむ会」といった小スペースで開催されていた。それらが閉鎖され、若手の会の空白区となっている現状に「笑仁亭」が誕生する意義は大きい。
若手にとっては研鑽の場に、ファンにとっては荒削りでも迫力ある芸を至近距離で楽しめる貴重な場になりそうだ。
取材・文 んなあほな編集部
撮影:桂福枝
(左から)笑福亭智丸、桂福枝、月亭秀都