会長のご挨拶 8月
暑中お見舞い申し上げます。
いつも上方落語にご声援いただきありがとうございます。
8月になると、やはり甲子園が気になります。
今年も全国から高校球児が集まり、連日熱戦が繰り広げられています。長い高校野球の歴史を振り返れば、記憶に残る名勝負は数え切れません。
私が今でも思い出す試合の一つが、昭和59年、1984年の夏の決勝戦です。
桑田・清原で連続優勝を狙うPL学園と名将木内監督率いる茨城の取手二高の対戦。試合は一進一退の大接戦となり、延長戦へ。最後は取手二高が勝利をつかみました。
PL学園を応援していた大阪の人間にとっては、なんとも悔しい結末でした。しかし、年月が経って振り返ると、勝った取手二高の選手たちも、最後まで戦い抜いたPL学園の選手たちも、ともに強く記憶に残っています。
甲子園の名勝負には、そんな不思議なところがあります。
勝者だけが記憶されるのではありません。敗れた側の懸命な姿、最後まで諦めない姿、そして試合が終わった瞬間に見せる涙や笑顔までもが、私たちの心に残ります。
落語の高座も、重なる部分があります。
高座に上がれば、噺家にとっては一席一席が真剣勝負です。野球のように勝敗がつくわけではありませんが、お客様の笑いと拍手が、その日の「答え」になります。
大看板の師匠も、これから大きく羽ばたこうとする若手も、同じ舞台に立てば、一人の噺家としてお客様と向き合います。
そんな高座が繰り広げられてきた天満天神繁昌亭が、9月15日、開場20周年を迎えます。
20年、甲子園でいえば多くの世代の球児が入れ替わる年月です。その間、繁昌亭の舞台にも数え切れないほどの噺家が立ち、数え切れないほどの笑いが生まれました。
そして20周年に向け緞帳の新調、舞台照明のLED化工事の為の休館(24日から14日まで)を経て、繁昌亭は新しく生まれ変わります。
舞台が新しくなっても、そこに流れるものは変わりません。
二十年間受け継がれてきた上方落語の伝統。その舞台に、新しい世代の噺家たちが立ち、新しい笑いを生み出していく。
これは、毎年新しい球児たちが甲子園の土を踏み、新しい名勝負を生み出していく姿にも重なります。
甲子園では、今年もまた、誰も予想しなかったドラマが生まれることでしょう。
そして秋、新しい緞帳が上がった繁昌亭でも、「あの高座は忘れられない」と言われるような一席が生まれることを期待しています。
甲子園には、球児たちの「最後の夏」があります。
繁昌亭には、二十年の歴史を受け継いだ「新しい秋」がやってきます。
さて、今年の甲子園では、どんな名勝負が生まれるのでしょう。
そして9月15日、新しく生まれ変わった繁昌亭では、どんな名高座が生まれるのでしょう。
今年の夏は、甲子園球児に声援を送りながら、秋の繁昌亭の新しい舞台にも、ご期待ください。
天満天神繁昌亭(連日ミスト噴霧中)
誠に勝手ながら、24日からリニューアル工事のため休館させていただきます。
休館前の一週間は、「噺家芸歴四十周年記念ウィーク」(17日〜)
神戸新開地喜楽館
~鉄道ウイーク~(17日〜)
酷暑の8月、涼しい劇場でごゆっくりお過ごしください。
公益社団法人 上方落語協会
会長 笑福亭仁智