公益社団法人 上方落語協会

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会長のご挨拶 5月

 心地よい風に気持ちが前向きになる季節、上方落語に肩入れいただきありがとうございます。
 
 さて、ごく個人的な話で恐縮ですが、先日東京在住の孫(中2)から「青春18きっぷ」を利用して一人旅をするので、泊まらせて欲しいとの連絡がありました。
 幼いイメージがあるので心配していましたが、無事夜に到着。次の日は、一人で京都に1日観光。もう一泊してさらに広島の親戚宅を目指すというので、午前中乗り換え駅の相生まで付き合うことにしました。2時間ちょっとの初めての小さな2人だけの旅でしたが、飛行機や新幹線と違いスピードがそういう気持ちにさせるのか軽い話から深い話までゆっくり流れる風景を眺めながら過ごす思いの外貴重な時間となりました。
 本人どんなキッカケで思い立ったか知りませんが、鈍行での一人旅きっと少し成長したに違いないです。ただ、浜松のうなぎ屋で4,700円の鰻重を食べたと聞いた時には、ムッとしました。
 
 そういう私は入門二十年目の夏、期するものがあり落語の「東の旅」よろしく兄弟弟子と、歩いて170Km7日間チャリティ落語会をしながら伊勢参りの旅に出ました。
 私は当時の漫然と過ごす澱んだ日々を打破するために、他の兄弟弟子もそれぞれ思いがありましたが、いく先々での人々との触れ合い、歩く旅での時間の流れ、見える景色何もかもが肥やしになった思い出に残るイベントになりました。
 上方の落語家は、なぜか機会があれば歩いて伊勢参りを、落語「東の旅」を地でいく時間の流れを体感したいと思っています。古くは、前会長桂三枝(現六代文枝)師匠が、また桂福團治師匠が経験されたと聞いております。
 つい先日には、桂文珍師の弟子文五郎さんが歩いたと新聞やSNSで報告していました。彼も何かの思いがそうさせたろうし、きっと何か得たに違いないでしょう。特に若手時代にはいい体験に違いないです。

 3月20日三人同時襲名した、ざこば一門のちょうば改め桂米之助さんは、昨年襲名の決意と成功の願掛けとして富士登山を決行し登頂に成功しました。

 古くから願掛けや決意を表すため、茶断ち酒断ちで成就を願う風習があり、落語でも酒飲みが酒を絶って改心する心揺さぶられる男の噺がいくつかあります。
 
 新たな旅立ちの4月、決意新たに酒を断つ人、神仏に誓う人、お百度参りをする人、八十八ヶ所お遍路巡りを始める人、習い事を始める人、皆様の大願成就をお祈りしております。

 天満天神繁昌亭の4月は、「花形落語家フェスティバル」と銘打ち、入門16年目から24年目までの気鋭の噺家が決意新たに昼席でトリを取り飛躍を期す特別興行です。

 また、新開地喜楽館では、「力造・米之助・惣兵衛三人同時襲名披露公演」、「喜楽館AWARD2024ファイナリストウィーク・林家染吉の巻」、「喜楽館AWARD2024ファイナリストウィーク・笑福亭鉄瓶の巻」、「喜楽館AWARD2024ファイナリストウィーク・桂三四郎の巻」と中堅実力派が記念で一週間トリを務め飛躍を誓います。

 是非、決意を秘めた新進気鋭の噺をお楽しみください。皆様のご来場お待ちしております。

 公益社団法人 上方落語協会    
   会長 笑福亭仁智