公益社団法人 上方落語協会

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会長のご挨拶 6月

 いつも上方落語をご贔屓いただきありがとうございます。

 6月といえば衣替えです。
 でも最近は、四月や五月でも真夏のような日があれば、六月になっても肌寒い日がある。半袖の人の横をコート姿の人が歩いていることも珍しくありません。
 昔は四季折々に装いを替えたものですが、近頃は「日本の四季も二季になったなあ」などという声も聞こえます。
 我々の衣装も、本来は十一月から五月まで袷、六月と九月だけ単衣という決まりがありましたが、気候の変化とともに、その季節感も随分変わってきました。

 それでも六月と聞けば、紫陽花。
 雨に濡れた花の色は晴れの日とはまた違った美しさがあり、田植えの始まった田園風景や、梅干しづくりの話題などとともに、この時季ならではの風情を感じさせてくれます。
 とはいえ梅雨はなかなかの曲者です。洗濯物は乾かない。押し入れにはカビが生える。食べ物は傷みやすい。昔の家では雨漏りも珍しくなく、天井から落ちる雫の下に金だらいや洗面器を並べたものでした。
 「カントン、タンカン、カントン、タン」
 聞きなしやオノマトペにも限界があります。寝ようと思うとこれがなかなかうるさい。今となってはどこか懐かしい思い出です。

 天気予報も昔は大らかなものでした。
明治十七年六月一日に出された日本最初の天気予報を見ると、
 「全国一般 風ノ向キハ定リナシ 天気ハ変リ易シ 但シ雨天勝チ」
 随分鷹揚な予報があったもので、聞く方も外れるのが当たり前で「予報官が下駄を投げて決めている」「気象台の運動会が雨で中止になった」などとこちらもある程度はおおらかに付き合っておりました。

 さてそんな雨との付き合いは、落語や芝居にも欠かせません。
 歌舞伎では、江戸と上方で雨音の下座の表現が違うそうです。
 江戸の雨は、番傘に当たる勢いのある「パチパチ」という音。荒事の世界にふさわしい粋で威勢のよい雨音です。
 一方、上方の雨は和傘に落ちる「ポツポツ」というしっとりした雨。和事や心中物の哀愁を引き立てる艶のある雨ですね。
 同じ雨でも聞こえ方が違う。これもまた土地柄の面白さでしょうか。

 落語にも雨はたびたび登場します。
天気予報に振り回される上方落語の「日和違い」。
雨の日の退屈と人恋しさを描いた名作「笠碁」。
山吹の花にまつわる逸話で知られる「道灌」。
そして、大雨の日に蕎麦屋へ飛び込んできた浪人の姿から、歌舞伎史に残る名演を生み出した「中村仲蔵」。
ほかにも「金明竹」「雨乞い源兵衛」「天災」など等。
 庶民の日常を描いてきた落語だからこそ、雨もまた大切な登場人物なんです。

 近頃では、雨音には心を落ち着かせる働きがあるとも言われています。しとしと降る雨を聞いていると、不思議と気持ちが静まり、忙しい毎日の歩みが少しゆっくりになる気がします。
 晴れの日ばかりでは田も潤わず、紫陽花もきれいに咲きません。
 人の暮らしも時には雨の日があるからこそ、晴れの日のありがたさが分かるのかもしれません。
 うっとうしいと思われがちな梅雨の季節ですが、たまには雨音に耳を傾けながら、落語の中に息づく昔の暮らしや人情に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
 雨もまた、なかなか捨てたものではありません。
 近頃では、かえって雨降りの方が猛暑より過ごしやすいのでホッとしたりもします。

 6月の繁昌亭は、
「喬若 改メ 三代目 笑福亭三喬 襲名記念ウィーク」(1日〜)、「笑福亭笑利 第20回繁昌亭大賞 新人賞受賞記念ウィーク」(29日〜)
 喜楽館は、
「喜楽館AWARD2025ファイナリスト桂吉の丞主任興行」(1日〜)、「喜楽館AWARD2025優勝 桂佐ん吉主任興行」(8日〜)、「喜楽館AWARD2025ファイナリスト笑福亭鉄瓶主任興行」(15日〜)、「プロ野球応援企画」(22日〜)

 今月も繁昌亭・喜楽館でカラッとお笑いください。お待ちしております!

 公益社団法人 上方落語協会
   会長 笑福亭仁智