会長のご挨拶 10月
 キンモクセイの香りと虫の声。
「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、今年もやっと秋らしくなって参りました。
 近年、四季から二季へといわれますが短い秋を楽しみたいものです。
さて、食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、行楽の秋、そして芸術の秋と様々に楽しみはありますが、関西の落語定席館、天満天神繁昌亭・神戸新開地喜楽館でも上方落語をたっぷり楽しんでいただこうと盛りだくさんな企画で皆様をお迎えいたします。
 まず、繁昌亭の目玉は、10月20日(月)からの「桂米朝生誕百周年記念ウィーク」。三代目桂米朝師匠の生誕百年を記念して、その偉大な功績を讃え顕彰する一週間です。
 言うまでもなく、米朝師匠の落語界への貢献は「上方落語中興の祖」と言っても決して過言ではない多大な功績を遺されました。
 戦後、文献や古老の噺家のなかに埋もれていた多くの落語を掘り出し、また改作し現代でも通じる噺に仕立て、後世に遺すという作業をライフワークとして続けておられました。
 それにより多くの演らなくなったネタ、時代にあわあないネタを蘇らせ、噺に息吹を注入し、一時「滅んだ」と言われた上方落語が存続・復活をなしえた救世主といえます。「地獄八景亡者戯」「算段の平兵衛」など大ネタや「天狗裁き」、そして今や前座ネタの定番「動物園」まで復活・改作されました。
 そして無くなった定席に変わり、全国各地で「ホール落語」を展開、まずじっくり落語を味わえる環境づくり、そして小松左京、小沢昭一、永六輔・司馬遼太郎各氏らとの交流で落語の文化的価値や落語家の文化的地位向上、後進の育成、同時期に共に上方落語復活に尽力された、松鶴・春團治・文枝各氏師匠への影響も含め計り知れない功績を遺されたのです。さらに東京に移植されたネタを考えるとその存在も含め 江戸落語への貢献も大きいと言えます。
 そして平成21年、落語界でただひとり文化勲章を受章されました。
上方落語協会では生誕百年を迎えられた今年、師匠の功績を顕彰するため「桂米朝生誕百周年記念ウィーク」(繁昌亭で10月20日から一週間)を開催、さらに11月3日から11月末まで約1ヶ月間「文化勲章受章 桂米朝 生誕百年記念月間」(秘蔵映像の放映、グッズ限定販売あり)と続き、その間繁昌亭ロビーでは「特別パネル展」も併催し、協会あげてのイベントといたします。

 何卒この機会に、「上方落語中興の祖桂米朝」の功績、落語に触れていただき充実した秋の時間をお過ごしください。
 また芸術の秋、繁昌亭では未来の桂米朝、噺家入門十五周年を祝う「噺家15周年 翔ぶトリウィーク」(5日まで桂あおば、6日から桂鞠輔、13日から桂紋四郎)を開催いたします。
 そして神戸新開地喜楽館では、「~枝鶴・文之助・学光芸歴50周年記念ウイーク~」(5日まで)、「〜防犯ウィーク〜」(13日から)、「~阪神電気鉄道 開業120周年記念 兵庫県民ウイーク~」(20日から)と盛りだくさんでお客様をお迎えいたします。
是非さわやかな秋風の中、繁昌亭・喜楽館へ足をお運びください。
 公益社団法人 上方落語協会
   会長 笑福亭仁智