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噺家15周年 〜翔ぶトリウィーク〜 インタビュー 福点編 

1月20日からの「翔ぶトリウィーク」第5弾の主役、桂福点さんに聞きました。

──ズバリ聞きます。おいくつですか?

福点「56歳です」

──私より10歳若いんや。ということは41歳頃に入門したと。

福点「そうです、芸名をいただいたのは2009年の11月なんですけど、師匠の元へ通い出したのは1996年、28歳頃のことでした」

──師匠は福団治師匠。

福点「そうです。色々な事情があって名前をいただくまでには時間がかかりましたけど、今年で15年になります」

──福点の点は、点字の点ですよね。

福点「それと10番目の弟子ということで点とtenをかけて」

──そうなんや。でも目が不自由、いわゆる視覚障害者で落語家にとなると苦労も多いと思いますけど、なにがきっかけで落語家になろうと?

福点「小学生の頃から落語は好きやったんですよ。目が見えなくなったのは中学生からですから、それまではテレビでよく落語を見てました」

──どんな人が好きやったんですか?

福点「枝雀師匠が面白かったですね。あと五代目の文枝師匠、当時は小文枝師匠でしたけど。
それと米朝師匠なんかよく聴きました。それと月の家圓鏡師匠」

──ホーッ、後の橘家圓蔵師匠。

福点「あの師匠自身も面白いんですけど、演じる落語の登場人物自体が面白いんですよね。
落語ってすごいと思いました」

──それが忘れられずに落語家に?

福点「いや、初めて師匠の元に行った前年に阪神淡路大震災がありましてね、身内の家が被災しまして。クルマに乗せてもらって現地へ行ったんですが、普通なら1時間で行けるところを8時間。それもガタガタガタガタ揺れる中で、目が見えないものですから音と振動しか感じるものがないんですね。それでPTSD的なことになってしまった時期がありまして。私は、以前から音楽療法士という仕事をしてたんですが、そのときも少しボランティア的に施設なんかに行ってやったんですよ」

──なにかせなっていう感じなのかな。

福点「そうですね、音楽で心の癒しを与えて、それでちょっと面白いことを言うとよく笑ってくれるんです。そのときに改めて笑いってええな、そや、落語があるからこれで笑ってもらえたらと。落語って登場人物や風景が頭に浮かぶんですよね。目の見えない者でもわかるしできるんです」

──たしかに目をつぶって聴いてる人もいたはるしね。

福点「子供の頃からアニメも好きやったんですけど、アニメとか映画とかは音を聴いてても頭の中で映像が浮かばないんですよ。でも落語は浮かぶ。やってても自分が作り上げる空間ていうんですか、座布団の上に自分の宇宙ができるんです」

──ハァ・・・?

福点「こんな素晴らしいもんをやれたらと思って」

──ハァ・・・。私も50年近く前に落語が好きで好きでこの世界に飛び込んだけど、そこまで明確に落語ってこんなんやって思ったわけではなかったな・・・。今でもそこまでしっかりと考えてるかな・・・。
では気持ちを切り替えて。Eテレのバリアフリーバラエティなんかにも出演したはったし、福祉関係のイベントなんかでも大活躍の福点さんですけど、今回の15周年、月並みですが意気込みをお願いいたします。

福点「そらもう今まで学んできたことを出すだけなんですけど、来てくれはったお客さんがほっこりした気持ちになって帰ってもらえる、そういう1週間にしたいです」

──ネタは?

福点「師匠から直接教えてもろた噺をしたいと思っています。1週間ネタを替えるとかではなくて、自信のあるところを二つぐらいやっていきたいなと」

──これから先はどんな噺家になりたいですか。

福点「そらもう、とにかく呼んでいただける噺家になりたいです」

──ま、それが我々の基本やもんね。

福点「我々芸人は行く先々の水に合わねばで、自分がなんぼこれがええんやと思てても、前にいたはるお客さんに気に入られへんかったらどうしようもないやないですか」

──おっしゃるとおり。

福点「それと、落語になりたいです」

──・・・??? またわからんこと言いだしたでこの人は。落語になりたい?

福点「私生活のうえで落語になりたい」

──う〜ん、落語に登場するような生き方をしたい、そんなとこですかね。けど時代はそういう生き方を許してくれない空気やけどね、許される範囲でということですかね。

視覚障害というハンデを(あえてハンデと言わせてもらいます)背負って、それでもそれをマイナスにしないで逆にプラスに変えていく高座を勤めている福点さん。彼の高座を初めて見たのは「輪茶輪茶庵勉強会」という、私が監督役をしていた落語会でした。
まだコロナの前の話です。その頃は、輪茶輪茶庵勉強会で私と当時の恩田支配人が見てOKを出さなければ繁昌亭昼席に前座として出られませんでした。(今はルールが変わってそのシステムはありませんが)そのとき彼の落語を聴いて、もちろん決して上手くはないけれども、こんな楽しい落語をする人がなんで今まで目にとまらなかったんか。インタビューでもあったように、落語を使って座布団の上で宇宙を作っている。
そんな彼の15周年。ぜひその宇宙にお越しください。

桂福点噺家15周年 〜翔ぶトリウィーク〜は、2025年1月20日(月)〜26日(日)です。

 

文 桂枝女太 

 

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