将来の名人

将来の名人に聞く【桂文五郎 編】

桂 文五郎


生年月日 1984年(昭和59年)9月8日
入門   2013年(平成25年)1月1日
文珍門下
出身地  大阪府堺市

[あこがれのひと]
10年間、オートバイ整備士として勤務。工場長に就任までし、28才で結婚もしていた。にもかかわらず、安定な生活を無にして、親に猛反対を食らいながらも落語家になった文五郎くん。なんばグランド花月で漫才と漫才の間に登場し、大爆笑をとっている桂文珍師を一目見て惚れ込んだからだ。
その後、独演会で師の『三十石』を聴いた帰り道、身体がガックリガックリ揺れて、しばらく船に乗っている感覚がおさまらなかったという。
「それ、よう考えたら電車に乗ってましたというオチ違うのん?」
「いえ、ほんまに揺れてました」
そのときに「このひとや!」と自分の中で決断がくだったそうな。

[何度でもトライ]
寄席通いをしながら入門を請うため幾たびも幾たびもトライしていたある日のこと。東成区民センターで出待ちをしていると師が彼の顔を見て、
「あ・し・た・N・G・K」
と合言葉のような謎のメッセージをささやいた。そう、つまり「明日NGKに来なさい」という意味だ。
「やったぁ!」
ようようのことで話を聞いてもらうところまで漕ぎ着けた。翌日、喫茶店で面接の折、別れ際に落語の素養など一切ない彼に「『兵庫船』を覚えてきなさい」といきなり難問を突きつけられた。
「エエーッ」
必死で覚えた。
そして数日後、稽古場へ出向く。対面している師の口から漏れる言葉は「違う、違う」「やめてしまえ」と完全否定。それでも覚えてきた努力は認めましょうということで、ようやく入門が許されたのであった。

[大ネタ披露]
それから3年間の弟子修行が始まった。
2年めには、なんと、思い入れ深い『三十石』の稽古をつけてもらい、しかも神戸酒心館「春秋落語会」の前座で40分の大ネタをやることに。前の客の「まだ演るか」「なんで船唄まで」とひそひそ声が堪らなく気になったが、汗ダクで舞台袖に戻ると師匠から「声はよく出てた」とお褒めの言葉(?)をいただいた。そのあと高座にあがった師の第一声が忘れられない。
「わたしは演れ言うてないんです。あいつが勝手に演りよったんですわ」

[恨めしいふたり会]
晴れて年季が明け、師の独演会に同行していたが、ある日「いつまでも甘えてたらあかん」と、自主で地域寄席を起ちあげるよう命じられた。地元、御所(ごせ)でも会を開き研鑽を重ねる日々。
同期の智丸くんと「文五郎・智丸ふたり会」も企画した。ところが当日、文五郎くんはインフルエンザにかかり、あわや中止と思いきや、智丸くんはせっかく来てくださったお客様に申し訳ないと別の者とふたり会を決行。おもての
看板だけが「文五郎・智丸ふたり会」とさみしく掲げられていた。

[弟子の条件]
最近、師匠から「ええ弟子の条件があるのを知ってるか」と尋ねられるそうな。「教えたろか。それはな、修行中は〈気の利いた弟子であること〉や。けど、独立したら〈売れる弟子になること〉なんやで」と。
将来は入門前に見た師匠の舞台=NGKで漫才と漫才の間に大爆笑をとれる人気者になりたい。
もちろん、お蔵入りになったままの「文五郎・智丸ふたり会」の看板をもう一度掲げたいとも思っている。

[苔玉(こけだま)]
それから彼にはもうひとつ夢がある。
いま、ガーデニングに凝っていて苔玉を作るのを得意にしている。これを販売したところ、飛ぶように売れた。演芸と園芸のつながりで、いつかきっとNHK「趣味の園芸」でパーソナリティを務めることができれば……。「落語のできる苔玉名人」は、ひそかにその想いを温めている。

【取材・文 月亭文都】
【写真 月亭天使】

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