将来の名人

将来の名人に聞く【笑福亭智丸 編】

笑福亭 智丸


生年月日 1988年(昭和63年)11月17日
入門   2013年(平成25年)4月1日
仁智門下
出身地  大阪府

[張り込み]
小さい頃から漫才・コントは好きだったが、中学、高校と年齢を重ねていくうちに、次第に落語にハマり出した。繁昌亭こけら落としにも来場している。
芸大に進学しオチケンに入部したが、落語を演っているとみんなから異端児と軽蔑され迫害された。その頃の風潮としてはピン芸人や一発ギャグのほうが目立っていたからだろう。それだけに余計に落語が新鮮に感じられたのかも
知れない。
そんな中、谷町六丁目の落語会で観た笑福亭仁智師の高座は、自分と波長が合うというか、センスが合うというか、とにかく文句なしに惹きつけられた。その後、大学院生活2年を経て、卒業後は専攻していた文芸の世界も捨てきれなかったが、思い切って落語の道を選んだ。親は反対するどころか、我が子の選択を程よく理解してくれた。
仁智師の追っかけをして、連日、楽屋口で待ち伏せをする。まるで刑事が張り込みをしているかのように、身を潜め、息を殺し……。何度めかのプッシュで、先の文五郎くんと同じように「ネタを覚えてきたら見てあげよう」と言われ、『二人ぐせ』を聴いてもらった。無我夢中。彼が一編の噺を喋り終えると、師はうつむいたままジーッと沈黙している。断り文句を考えているのか……。おもむろに師
が上体を起こした。すると、ぽつりと捨て台詞のように、
「いっぺん来るか」

[焦燥]
オチケンに長く在籍していると悪いクセがつくとよく聞く。確かに個性の時代だから特徴があるのはいいが、やはりリズムやテンポひとつで、金のとれる芸かそうでないか違ってくると思う。
彼はそれを矯正するために時間がかかった。本来なら仁鶴一門では修行中にネタを10本マスターすることになっているのだが、早くも4本めでブレーキがかかってしまう。
『色事根問』は10ヶ月を要した。師のテンポのあるリズム感がなかなか習得できない。おとうと弟子が次から次へと追い抜いていきそうな勢いで後ろから迫ってくる気がする。焦りはピークに達していた。

[リバウンド]
結局、3年間舞台にあげてもらえず、その反動からか、年季が明けると小さな会をあちらにもこちらにもボコボコ産出していった。いまやコンビニ状態。古典に留まらず、新作や改作にも大いに力を入れている。コツコツやるのが彼の流儀だ。

[吟遊詩人]
落語家になる前は詩人を目指していた。本名の疋田龍乃介の名で「歯車VS丙午」を上梓し、中原中也賞、萩原朔太郎記念とをるもう賞の最終候補にもなったほどの力量の持ち主。
明年(2022)、2冊目の詩集を刊行する予定である。そして、同名同趣旨の新作詩と新作落語をシンクロさせて発表するイベントを現在構想中。これはおもしろそうではないか。期待に胸が膨らむ。

[アーティスト型]
彼のゆくゆくの理想の姿は、他人がどう思おうが、なんと言われようが、自分の満足度100%の芸人になることだと話す。まさしく〈アーティスト型落語家〉と呼ぶにふさわしい。
智丸くんの果てしなきヴィジョンに今後も目が離せない。ぜひライブ会場でご覧いただきたい。

【取材・文 月亭文都】
【写真 月亭天使】

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