露の団姫さんが自前のお寺を建てました!
尼崎市西長洲の「道心寺」。
実はまだ完成していなくて、開山は2021年春頃の予定。
2020年中にという予定がコロナ禍の影響で資金集めが思うようにいかず、延び延びになっているそうです。
住所だけを聞いてスマホの地図アプリを頼りに取材へと出かけましたが・・・。
どこだ?
スマホはたしかに今立っているところがその住所だと教えてくれているのだが。
ここは尼崎の住宅街の一角。お寺らしきものは・・・ない。
すると前から歩いてきたのが撮影のため同行してくれる笑福亭恭瓶君。
「ええとこで会うた。どこやわからへん」
「ここです」
え?ここ?
目の前にあるのは鉄筋コンクリート造りのお洒落な建物。
「これが、お寺?」
やはり昭和の人間だからか、お寺といえば木造で瓦葺で山門があって。
先入観とは怖いもの。そういえば最近はこういうお寺さんもあるような。
遠慮がちに中へ入ると住職の団姫さんがお出迎え。
中へ入ってまたびっくり。
ここは・・・オープン前の居酒屋か?
「ここは待合というかくつろいでいただくスペースで、本堂は2階です」
さよか。案内されて2階へ。
そこで目に飛び込んできたのは二十数脚の椅子と、結構広めの舞台。…舞台???
どう見ても舞台だ。ちゃんと座布団が置いてある。
あの、ご本尊様は?
「だいたい完成したんですけど、ご本尊様だけがまだなんです」
ん???それは完成とは言わんでしょ。
「資金繰りがなかなか厳しくって、でも5月頃にはご本尊様も立派にできる予定です」
露の団姫さんは落語ファンならずともご存知と思いますが、天台宗のお坊さん。
比叡山で修行をされた立派な僧侶です。
落語家でありお坊さんであり。
順番としては落語家が先です。
落語家としては2005年に露の団四郎師に入門。
出家したのは2011年、修行後、正式に天台宗の僧侶になったのは翌2012年。
でも、なんで? なんでお坊さんに?
「高校生の頃から宗教には興味があったんです。落語家になろうかお坊さんになろうか悩んだんですが、まずは落語家になって仏教落語をしようと」
なるほど、それで先に落語家になったわけね。
若い頃から落語に興味を持つのはわかります。我々もそうでしたから。
でも仏教って。
「私は子供の頃から怖がりやったんです。死んだらどうなるのとか。それで宗教を極めればそんな不安からも解消されるかと思って、いろんな宗教の本を読みました。聖書やコーランも」
ええっ!聖書にコーラン!
仏教だけやないんかい。
「それで私として一番ストンときたのが、法華経でした」
???
どうも今回の取材は「!」と「?」が多すぎる。
ともあれ、落語家になり仏教落語を作って、そして僧侶になりお寺を建ててと、う~ん、これは凡人にはなかなかできることではありません。
上方落語協会にはもう一人お坊さんがいます。
好きになった女の子がお寺の娘さんで、僧侶になってうちの寺を継ぐというのなら結婚を許すと言われて勉強してお坊さんになった者がおります。
動機が動機なので敢えて名前は出しませんが(笑)。
団姫さんは確固とした信念を持って僧侶になりましたが、仏教以外は認めないというようなガチガチの仏教徒ではありません。
旦那様はクリスチャンなのです。ちなみに旦那様は太神楽の豊来家大治朗さん。つまり芸人同士のご夫婦です。
あ、忘れてました。
この舞台みたいな物は?
「舞台みたいな物やのうて、舞台でございます」
あ、さよか。
言われて気がついた。舞台の袖には大太鼓や締め太鼓など鳴り物一式が。
囃子部屋だ。
「ご本尊様はまだですけど、落語会ならいつでもできます」
落語会?
そういやお寺で落語会はよくあるパターン。
「ご本尊様にお越しいただいて、ちゃんと開山してからの話しになると思いますけど、将来は毎月3のつく日に落語会をしたいと思っています」
これは落語家にとってはありがたい話です。
ご本尊様はどのような仏様で?
「明星観音様です」
???
はて、あまり聞いたことが・・・
「左手に金星を持っておられて、暗闇でも人々を照らしてくださる仏様です。神道では天照大神様の分霊ともされています」
明るい芸風の団姫さんにピッタリのような気がします。
団姫さんが大きな決断をして一寺を建立しようとしたのは坊主丸儲けを狙ったわけではなく、ましてや落語会をするためでもありません。
「生きづらい世の中だからこそ、志を持つ人を応援したい。また、なかなか志を持てないという人には、希望を見出し、志を持てるようなお手伝いをしたい。そのような願いを込めて「道心寺」とさせていただきます」(道心寺パンフレットより抜粋)
2021年春頃に開山予定ではあるものの、まだ資金のほうが予定額にはとうてい達していません。もしよろしければご寄進をお願いいたします。
お問合せはメールで。
道心寺プロジェクト事務局 doshinji9@gmail.com
悩み相談なども受けるとのこと。
檀家寺ではないのでお寺としての収入はまったく期待できないけれど、落語家として笑いを、僧侶として安らぎと志を与える場としての道心寺。開山が楽しみです。
文 桂枝女太
写真 笑福亭恭瓶