【左から、笑福亭仁智会長 露の紫、桂三実、笑福亭智丸】
12月5日、2024年の繁昌亭大賞受賞者が発表されました・・・が、
今年は残念ながら大賞は該当者なし、となりました。(泣)
これは2012年の第7回以来2回目。
審査委員のひとり、大阪天満宮文化研究所所長の高島幸次さんの説明によると・・・
これは後述します。
まずは奨励賞。こちらは二人選出されました。
露の紫さんと桂三実さん。
そして新人賞が笑福亭智丸さん。
露の紫さんは2008年10月入門。師匠は露の都師。
「他の方たちの受賞ウィークなどに呼んでもらえることも多く、乗っからせてもらって有り難いと思っています。だんだんと寄席の出番で自分の位置でどうしたらいいのかがわかってきたような気がします。これからもコツコツの積み重ねしかないと思っています」
受賞コメントでは謙虚な想いを語っていましたが、彼女の舞台から伝わるオーラは既に中堅、いやベテランの風格さえ感じるものです。
発表記者会見での笑福亭仁智会長や審査委員の講評でも、紫さんの演じる登場人物ひとりひとりへの気の入れ込み方が凄いという話がありました。
そう言われれば・・・コロナより前に記者(桂枝女太)も彼女に頼まれて稽古をつけたことがありました。ネタは「船弁慶」です。
キャリア10年未満の者にはなかなか手強いネタですが見事にやってのけました。
そのときに感じたのが目力の強さでした。落語家というより役者やんと思ったものです。
それが会長や審査委員の方々が感じた登場人物への強烈な入れ込みだったんですね。
そして桂三実さん。2012年5月入門。師匠は六代桂文枝師。
「まったく予想すらしていませんでした。今年は誰が取らはんねやろと、楽屋でみんなで話してたぐらいですから。2年前に新人賞をいただいてから、ちょっと舞台での自分に余裕が出てきたかなという感じはあります。年初には70作やった自作落語を今年は100作にと創作の幅を広げた1年でした」
今年の彼は凄かった。11月にNHK新人落語大賞を獲っただけでも凄いのに、繁昌亭の奨励賞まで。もちろんNHKの賞を獲るぐらいだから奨励賞に選ばれたんでしょうけど。
ご存知のように創作派。自作の創作落語が100近くもあるそうです。
数だけでなく面白い。とにかく面白い。本人曰く愛知県出身なので大阪弁がどうも苦手。
よく注意されたことでしょう。私も1回ぐらいは注意したのかな。でも彼はそれを逆手に取って見事に自分の世界を作っています。
審査委員からは「彼の創作落語は古典になり得る作品」とのお言葉をいただきました。
これからもどんどん楽しい噺を作ってくれるでしょう。
新人賞は笑福亭智丸さん。2013年4月入門で師匠は笑福亭仁智師。
「弟子入りする前は繁昌亭でアルバイトをしていましたので、繁昌亭に対してのリスペクトは凄くあります。今年は智六兄さんの訃報がありました。でも年の最後に師匠に明るい報告ができて良かったです」
彼の高座には落語に対する真摯さが伝わるというお言葉が審査委員からありました。彼は大阪芸大で講師をしています。落語家が大学などで教えるというと普通は落語なんです。
落語の面白さや話術等々。でも彼は「詩」を教えているそうです。いわゆる文学です。
まぁ落語も文学と言えば文学なんですが・・・ちょっと違う・・・ね。来年は詩集を出す予定もあるそうです。中原中也賞をマジで狙っているとか。以前に中原中也賞の候補にも挙がったそうです。これってマジで凄いですよ。
実は、彼は記者の高校の後輩です。ウーッ、なんか嬉しいですね。関係ないけど。
さて、今回大賞の該当者なしになった理由ですが、高島さんによりますと、審査委員の方々の中では二人ほど候補があったそうです。
ただあと一歩、いや来年もう一度だけ見て・・・というギリギリのところだったということです。その二人って誰やねんっちゅうことなんですが、名前は出ませんでした。
でも、でも、でも、普通に考えたらその二人って・・・。
大賞を二人出すというわけにはいかない、かといってどちらかにというわけにもいかない・・・
来年もう一度、その二人の活躍を見きわめるチャンスを、審査委員側がもらいたいっていうことなのかな。
これはあくまで記者の勝手な想像です。念のため。
受賞記念落語会が、2025年2月20日(木)に繁昌亭の夜席で行われます。
ホントにレベルの高い会になります。
ご来場お待ちしております。
文・写真 桂枝女太