入門15年を迎えた落語家5人がそれぞれ繁昌亭昼席のトリを7日連続でつとめる新企画「翔ぶトリウィーク」。先陣を切った林家愛染(8/26~9/1)、続く桂團治郎(9/16~9/22)の週はともに大盛況で、好調な滑り出しとなりました。
このうち愛染の週で前座をつとめた「んなあほな」編集部員、笑福亭喬龍が楽屋の様子などをお伝えします。
「肝臓が大変やわぁ」
私の出番は2日目の8/27(火)から3日間。開場時間よりも少し早めに楽屋に入ると、すでに愛染兄さんの姿が。噺家にお渡しするお祝いの品を整理したり、チラシの段取りをされたりしていた。「本日はおめでとうございます」とご挨拶すると「ありがとう、今席はよろしくね」。いつも通りの温和な笑顔で返していただく。
「大変ですね」とねぎらうと「今週は打ち上げが7日間続くから、肝臓の方が大変やわぁ」と笑う愛染兄さん。繁昌亭昼席のトリは初めてで、それが7日続く。しかも新しい企画の先頭打者ということもあって気負いがあるのは言うまでもないこと。でも、それを表に出さないのも噺家のあり方なんだなあと。
いつもは前座の待機部屋で着物に着替えるのだけど、先輩方と同じ空気を吸いたいと思って楽屋の隅で着替えさせていただく。
トリのために一丸となって
そうこうするうち、師匠方、先輩方が続々と楽屋入り。主役の愛染兄さんが共演を望んで編成したメンバーだけに、楽屋はいつもの昼席以上に和気藹々としている。
修行中、師匠である松喬に言われた。「楽屋って、みんな楽しそうにしてるやろ。けどな、みんな見えへんところで血が滲むような努力をしてるんやで。その上で努力してないフリするのが楽屋なんや」。楽しそうな楽屋を見るたび、この言葉を思い出す。
開演し、舞台から噺家が降りてくるたびに、こんなお客さんやからあんなネタがええんちゃうか、こんなネタがええんちゃうか、と番組を盛り上げるために多くの意見、助言が交わされる。
昼席は団体プレー。トリの愛染兄さんに向けて自分が与えられた役割を全うするため舞台にあがる。愛染兄さんのために出演者が一丸となって寄席を作る。そして愛染兄さんはそれに応える。
自分が「翔ぶトリウィーク」に出られるのは10年後。そのときまで「翔ぶトリウィーク」が続いていたらうれしいな、という想いを残して、楽屋リポートの締めくくりとさせていただきます。
文・笑福亭喬龍 写真・月亭天使
初日の楽屋。
(前列左から)笑福亭仁智、林家愛染、内海英華
(後列左から)桂雪鹿、桂白鹿、笑福亭枝鶴、林家染二、林家染八
≪編集部より≫
「翔ぶトリウィーク」はこのあと、第3週=桂三語 11月18日~24日、第4週=桂和歌ぽん 12月23日~28日、第5週=桂福点 2025年1月20日~26日 と続きます。
さらなる盛り上がりが期待されます!