『上方落語 笑われて あと心地よき 寄席囃子』
上方林家一門の総帥で元上方落語協会副会長、林家染丸が2026年8月で芸歴60周年を迎えた。これに先立ち、記念のエッセー集が7月、書店にて発売された(西日本出版社刊、税込2420円)。
読売新聞夕刊に連載したエッセーのほか、染丸が情熱を注ぐ寄席囃子、住よし踊などがテーマの章を弟子たちが大幅に加筆。上方落語、寄席囃子の魅力が詰まった好著となっている。
文・んなあほな編集部
(文中、落語家の敬称は略しました)

帯のコメントを執筆したのは桂文珍。駆け出し時代、染丸とは同じアパートの隣室どうしに住む間柄だった
自伝的エッセーは、上方落語の歴史
新刊のタイトルは「上方落語 笑われて あと心地よき 寄席囃子」。
「笑われて」以下の五七五の部分は、染丸がファンから色紙にサインを求められたときに好んで書き添えたフレーズである。
染丸は療養生活に入っていた2014年2月から4年9ヵ月にわたり、読売新聞夕刊(大阪本社版)演芸面に「染丸でございます」と題したエッセーを80回連載。そのすべてが新刊に収録された。
自らの生い立ち、芸能好きだった父親の影響、三代目染丸への入門、弟子修業、兄弟子の四代目小染が交通事故で他界してからの孤軍奮闘、そして40代前半の若さで大名跡を四代目として襲名──。
優しい語り口で綴られた自伝的エッセーであると同時に、上方落語の歴史をたどれる貴重な記録でもある。
「師匠の集大成の著書として、全国の落語ファンに読んでいただきたい」。
その熱意で出版を企画した筆頭弟子の染二を中心に、療養中の染丸に代わって門弟、演芸ライターの日高美恵氏たちが大幅に加筆し、上梓にこぎつけた。
金言が並ぶ「染丸語録」
新刊は染丸エッセーの章を含め、6つの章で構成されている。
「家の芸」の章では、染丸の高座の録画映像から「堀川」「浮かれの屑より」の音声を文字化して掲載。日本舞踊、義太夫の素養が必須の大作で、いずれも染丸が他の追随を許さないといわれる十八番だ。
染丸は10代の弟子修業時代から三味線演奏の研鑽を重ね、寄席囃子研究の第一人者の顔も持つ。落語の弟子13人とともに、「はやしや」を名乗るお囃子(寄席三味線奏者)の門弟11人(故人を含む)を育てた功績は、古今東西の落語界で他に例がない。
「染丸語録」の章は、現役の門弟たちが心に刻んでいる師匠の言葉を集めた。
「お前の目に見えるものがお客さんの目に見える」(染二)
噺の情景をしっかり認識していないとお客さんに伝わらない、という心構えを弟子に説いた。
「自分で自分にプレッシャーかけたらあかん」(はやしや絹代) など、読者にも響くに違いない金言が並ぶ。
他の主な章は次の通り。
■染丸インタビュー「よしもと落語の雑芸力」(日高美恵氏の記事を2010年刊の書籍から転載)
■寄席三味線のベテラン、入谷和女のインタビュー(構成=日高氏)
■寄席囃子に関する論稿(二松学舎大学文学部教授・中川桂氏=寄席・演芸の研究が専門)
■林家代々のこと、住よし踊(五番弟子・染雀)
■弟子を導く稽古の現場(六番弟子・竹丸)
後世に残る本に
新刊発売に先立ち、出版の記者発表が6月25日、上方落語協会会館で行われた。
筆頭弟子の染二をはじめ門弟6人、出版元の西日本出版社社長・内山正之氏、編集に深く関わった日高美恵氏が会見にのぞんだ。
染二は「師匠の功績、足跡を伝えることに大きな意味があります」と出版の意義を強調。
新刊の完成を伝えに赴くと、染丸が目を潤ませて喜んだことを報告した。
内山氏は出版にかけた思いを語った。同社は地域色を打ち出した個性的な書籍づくりで知られている。
「書店に並んでいる落語関連の書籍は東京落語のものばかり。上方落語の本があまりにも少ない。これを後世に残る本にしようと出版を引き受けました」
日高氏「染二さんから出版の相談を受けたのが2019年。その後、コロナ禍もあって難航していました。内山社長のご協力を得て、染二さんたちの7年越しの思いが実りました」
記者会見にのぞんだ染丸門弟たち。左から竹丸、菊丸、花丸、染二、うさぎ、染雀
写真提供:日高美恵氏
出版記念の林家染丸一門会が8月22日(土)、繁昌亭夜席にて開催される。(チケットは完売)
新刊の内容に合わせ、寄席囃子の実演、住よし踊のほか、染雀が「堀川」、トリの染二が「浮かれの屑より」を演じる。トークコーナーのスペシャルゲストは月亭八方。
書籍に関する問い合わせは下記へ。
西日本出版社 ℡ 06ー6338ー3078 Fax 06-6310-7057 jimotonohon@nifty.com
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