喬若改め三代目笑福亭三喬の襲名披露公演が大阪・国立文楽劇場(2026年2月)を皮切りに、名古屋、神戸など各地で回数を重ねています。襲名からの8ヵ月を本人に振り返っていただきました。

「名古屋公演で、お付き合いのない団体から花が届きました。どうやら宛先を間違えて届いたようで、あとで撤去されました(泣)」(三喬)
──襲名から半年余り。名前には慣れました?
三喬 まだ慣れないですが、お客さんから前名で呼ばれたり、師匠・松喬が西宮の独演会で高座から「いま舞台袖で(お囃子の)笛吹いてたん喬若ですわ」と紹介したとき、「ちゃいます僕、三喬です」・・心の中で言えるようになりました(笑)
──師匠もですか! 名前以外に大きく変わったことはありますか。
三喬 トリの出番を落語会でいただいたりするのですが、(繁昌亭昼席など)普段の寄席の出番はトリでないので、トリでかける大ネタがまだまだ稚拙なと言いますか、舞台にかけてない噺がぎょうさんあるんです。オハコのトリの噺を増やさなあかんという気持ちで焦ることが多いです。
──襲名以来、師匠の前名「三喬」の重みを感じるのはどんなときでしょう
三喬 自然体で何も考えずに、師匠の芸が良いと感じただけで入門したのに、とてつもない大きな名前の一門であることがわかったときからビビってます。
──これまでの襲名披露の舞台で 印象に残っていることは?
三喬 繁昌亭昼席の1週間の襲名興行で、中入り後の口上と、トリを7日連続でとらせていただきました。月曜から始まり、水曜まで満席にならなかったのですが、木曜に満員札止め! 「やったー」って喜んでたらその日、客席の定員216人のうち110人、約半数が広島県福山市の小学校の修学旅行の団体。その110人が中入りで帰るという・・(泣)
それだけやなくエピソードは山ほどありまして。また寄席に来ていただきましたらマクラでお話しします。
構成・林家竹丸 写真提供・笑福亭三喬
プレイバック 三代目笑福亭三喬 襲名披露公演
笑福亭松喬師匠の一番弟子・喬若兄さんが師匠の前名である三喬を襲名し、天満天神繁昌亭では6月1日から7日まで、神戸新開地・喜楽館では8月3日から9日まで、それぞれ三喬兄さんが7日間トリをつとめる襲名ウィークが開催されました。
文・写真 月亭天使
三喬兄さんは1998年に当時の笑福亭三喬(現・笑福亭松喬)に入門、笑福亭喬若として落語家人生を歩み始めます。2008年には、なにわ芸術祭新人賞を受賞するなど、落語はもとより、寄席囃子の笛の名手としても一目置かれる存在です。
三喬兄さんは、怒っているのを見たことがないぐらい、いつもニコニコしていて楽屋を和やかな空気にしてくれます。
そんなお兄さんの人柄が現れた高座は、落語「東の旅」の一節『空にはちゅうちゅうとヒバリがさえずっていようか、野には陽炎がもえていようか、遠山に霞がたなびいてレンゲ、タンポポの花盛り。人の気がなんとのう、のんびりといたします』を思い出させてくれます。

口上の直前、緞帳の内側で師匠・松喬(右)と。
襲名ウィークの口上では、黒紋付姿の先輩方が三喬兄さんについて語る中、松喬師匠のお言葉が心に残りました。
『三喬は最近やっと合格点の取れる芸になってきました。しかし、師匠にほめられているようでは、まだまだです。私が大学生の頃、関西の演芸番組を全て録音していました。
「六代目(※)、師匠の門下でこれから笑福亭を担うてくれるお弟子さんはいらっしゃいますか」の質問に必ず松鶴師匠は「ウチにロクな弟子はいてぇしまへん。仁鶴はテレビ・ラジオの人気ばっかりで、まだまだ噺に腰がすわってえしまへん。鶴光、アレはアホです」。どの局を回してもこの答えでした。そのとき私は感じました。「プロの世界はほめられているようでは、まだまだ。叱られてこそ一人前なんだ」と・・(中略) 三喬になって安穏としている暇はありません。もう一つ上の名前を目指して日々精進してくれることを期待しています』
ワタクシ、繁昌亭の客席で撮影しながら、胸を打たれました。
そして、松喬師匠の三喬兄さんへの期待も感じ、ジーンといたしました。

口上の舞台。三喬は右から3人目。背景はご贔屓さんから贈られた巨大後ろ幕
ところで余談なのですが、私、月亭天使は入門前、大阪の福島区で開催されていた『おそばと落語の会』に伺ったことがあります。当時は落語会情報がほとんど世に出回ってなくて、「落語会って、年配のお客さんが多いんかなぁ? 落語を聞くお作法とかあるんかな? けど、落語も聞けて、お蕎麦も食べられるのかぁ〜。お得やから行こっ!」と思い、ドキドキしながら会場に向かいました。
そのときの落語がすごく面白くて、その後もワッハ上方の松喬一門会や他の会に足を運ぶこととなり、その流れで、喬若兄さんから落語会情報のダイレクトメールが届くようになりました。しかし、私が落語家に入門したことをお伝えする機会がなく、その後も、落語家の家に落語会の案内が届いていました。すごく申し訳なかったです。
そんなお兄さんの律儀さやお人柄の現れる高座を、お客様は応援したくなるのではないかと思います。
襲名披露興行は、まだまだ続くので、ぜひ、ご来場いただきたく存じます。
(お兄さん、無駄に切手代を使っていただき、申し訳ございませんでした。この記事で、たくさんのお客様が会場に足を運んでくださることを祈っております!)

2026年6月、襲名披露ウィークの楽屋にて。(前列左から)林家うさぎ、桂福團治、笑福亭三喬、林家笑丸 (後列左から)笑福亭たま、笑福亭風喬
編集部注
(※)上方落語界で「六代目」といえば、笑福亭松鶴(1918-1986)のこと。同様に「三代目」は桂春團治(1930-2016)を指す。
*今後の襲名披露公演
2026年12月13日(日) 14:00開演
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール






















